わたしのなかのあなた

こういう人生を想像したこともかつてはあったのだろうか。
母親が乳癌になったとか、生まれた赤ん坊が先天性の心臓疾患だとか、あるいはなにかほかの医学的問題を抱えているとかいう話を聞いて、どんな気持ちになったかを今はもう思い出すことすらできない。同情するのと、自分の家族が無事でよかったと思うのとで、自分自身が真んなかから半分に分かれるような感覚を味わったのは覚えているけれど。今はわたしたちがほかのすべての人たちに対して、それを語る側になっている。
サラ 1997年

……だが子どもは、本来ならいるはずの場所にとどまってはいない。振り返って確かめると寝室におらず、クロゼットに隠れていたりする。振り返って確かめると、もう三歳ではなく、十三歳になっている。じつのところ親の役目とはただ子どものあとを追いかけるだけなのだろう。自分のまえからどんどん遠ざかっていく子どものつぎの動きが見えなくならないように、せいぜい祈るぐらいしかできないのだ。
ブライアン



内容(「BOOK」データベースより)
アナ・フィッツジェラルドは13歳。白血病を患う姉ケイトのドナーとなるべく、遺伝子操作によってデザイナー・ベイビーとして生まれてきた。それ以来彼女は、臍帯血の提供にはじまって、輸血や骨髄移植など姉の治療のためにさまざまな犠牲を強いられてきた。ケイトの病状は一進一退を繰り返し、両親はついに残された最後の手段である腎臓移植を決意する。だが、アナはこれを拒み、弁護士を雇い両親を相手取って訴訟を起こす。「もうこれ以上、姉の犠牲にはなりたくない。自分の体に対する権利は自分で守りたいの」と。突然の娘の反乱に戸惑う両親。しかし、アナの決意は変わらない。はたして前代未聞の裁判の行方は?そしてケイトとアナの姉妹の運命は…!?



キャメロン・ディアス出演で映画化、製作中とのこと。映画がヒットすれば、読者も増えるだろうが、もし映画が大コケしてもぜひ多くの方に読んでほしい作品である。