本能的表情



 生後10日。理屈の上では、まだ目も見えない(明るいか暗いか程度の区別しかできない)のだから、「社会的仕草」を学習したりなんぞする訳がない。
 だが、「不快」を示す表情はとてもはっきりしている。眉を寄せるのだ。眉を寄せていてもゴキゲン、ということはない。空腹を始めとするあらゆる「不快」を表明する端緒、それが「眉寄せ」である。
 視覚によって学習したものでないとしたら、これは本能的な反射ということになる。となると、「眉寄せ=不快」は全人類に共通するボディランゲージなのだろうか?社会的振る舞いではないのだとしたら、人間以外の「眉」がある(または、眉に当たる部分の筋肉が動く)動物でも同様なのだろうか?そう言えば、うららも時折眉間に皺を寄せている。じゃあ、猫語が習得できなくても、試しに眉を寄せてみたら、うららと意思疎通が図れるのだろうか?うーん、ミステリー。


 不快を示す本能の意義は何となく分かる。生存に必要なんだろーな、とかその程度の認識だが。けれども、「快」を表す仕草となると分からない。ある筈がないのだ。
 でも、時折「にいっ」と笑うのである。満足気に目を細め、口角を上げ、微笑むような表情をするのだ。それも、満腹であったり、オムツを替えたばかりであったりする時に特にそういう顔を見せる。「これは単なる筋肉の動きであって、感情の表出ではない」と理解してはいるのだが、「いや、もしかしたら本当に『快』を表現しているのかも」と思わずにはいられない。
 もうね、メロメロ。私はコレを「サービススマイル」と名付けたい。親にサービスしていると思いきや、親を積極的に奉仕(サービス)させるための必殺技。


 「サービススマイル」されると忘我の境地に陥るので、写真が撮れない。眉を寄せられても、何かしら対応せねばならないので、やはり撮影している余裕がない。そんな訳で、どうも脱力したような顔ばかりを撮ってしまう。赤ん坊の写真を撮るのって、思っていたよりも難しい。


 「赤ん坊」と表記するのもややこしいが、本名を明かすと将来本人に怒られそうなので、適当なニックネームを定めたい。以降、娘の名は「かん子」とする。本名をテキトーにもじっております。
 うららと並び、かん子をどうぞよろしく。