不思議なひとみしり



両親の家に5泊してきた。祖母に会いに行ったり、友人が会いに来てくれたり、中華街に繰り出したりと活動的に過ごし、帰ってきたら体調不良。なんかダルイな〜、と思っていたら片方のおっぱいにしこりが出来て、乳腺炎っぽくなってしまった。かん子さんが体重を預けたり、最近益々器用になった手でぎゅううーっと掴んだりすると、ギャーっと叫びたくなるほど痛む。疲労やストレスが溜まったところで、汗をかいて水分不足になると発生しやすいらしい。つくづく夏に弱い人間である。
幸い、熱が出るまでには至らず、自分でもみほぐしたり(痛い)、かん子さんに片方だけ重点的に吸ってもらったりしてだいぶ良くなった。夏は怖いねえ。


それはさておき。
両親宅に友人が尋ねてきてくれることになった時、私は一つ実験をすることにした。名付けて、「ひとみしり撹乱作戦」。
かん子さんは4ヶ月を過ぎたあたりから、「ひとみしり」をするようになった。ところが、その「やりかた」がどうもちょっと奇妙なような気がする。
外で会う人(通りすがりの人・店員・病院職員など)には、相変わらずニコニコと愛想を振りまくのである。しかし、家に訪ねてきたお客さんを見るや、うぎゃーっと喚いて泣く。二度ほど家人の両親宅で預かってもらったのだが、お邪魔しまーす、と中に入って二人の顔を見た途端に泣く。ところが、迎えに行った私が彼女を抱いて外に出て、荷物を持ってくれた義父を見ても……泣かないんだな、これが。さっきまで見ると泣いていた人と同一人物だというのに。
さて、いったいどのような理屈が働くとこのような現象が起こるのだろうか?

・自宅に来た知らない人
・知らない場所にいる知らない人(見慣れない場所にいる見慣れない人)

この条件で人見知りが発動するならば、初めて訪れる外出先で見も知らぬ人にひとみしりせぬのは何故なのだ?あの愛想の良さはどの程度維持できるものなのか?ああー、シャイなのか積極的なのか、よく分からん!
そこで、実験魂がむくむくと頭をもたげた。(おまえの魂には頭があるのか!とか突っ込んで話の腰を折らないよーに。話に腰があるのか!とか言って状況をややこしくしないよーに。)

外で会った見知らぬ人が、家の中に入ってきたらどうなるんだろう?

この実験は、我が家に誰かが尋ねてきてくれなければ実行できない。そこらへんで話し掛けられたおばちゃんを、ムリヤリ招待するわけにはいかない。私がおまわりさんにご招待されてしまう。
自宅ではないとはいえ、かん子さんもだいぶ両親宅に慣れた5日目。友人が来てくれるのは願ってもない機会である。私は友人を迎えに途中まで赴くことにした。

 <実験レポート>
  ・路上で友人に会う
  ・かん子さんは、通常通り愛想を振りまく
  ・そのまま両親宅へと入る
  ・1時間弱様子を見たが、「ひとみしり」反応は発現しない

 結論
  「かん子さんを騙すのはカンタンである。」

これから我が家においでいただくお客様は、必要もないのに外で待ち合わせることを要求されることであろう。早く始まったひとみしりが、早く終わることを願うものである。